不倫歴50年の女

日曜日は彼と過ごす貴重な一日。
なのに今日は朝から頭が割れそうに痛くてベットから出られない。
悦子さんと飲んだ次の日は必ずこうだ。
悦子さんは73歳、旅行企画会社勤務。
50年間一人の男性と不倫してきた。
その彼とは2年前に別れた。
彼女は酔うと必ずこの話をする。

50年間の不倫のおわり方って?

不倫の始まりは半世紀前。
まだ敗戦をひきずった日本にはマッカーサーやらトルーマンがいた時代。
紅白歌合戦では笠置しづ子が東京ウギブギ歌ってた。

ハタチで上京した悦子さんが
最初に入社した会社にいたのが10歳年上の彼。
彼には奥さんも子供もいたけど
彼女には関係なかった。
女性にとって、不倫の始まりは普通の恋愛とかわらない、
もしくはもっとおきらくなもの?
大抵は男のほうから好意を寄せてくるから
始め言い寄られる女のほうには罪悪感が無いでしょう?
そして女は年上の男性に父性をみて気持ちの安らぎを得はじめちゃう。

それにしても彼女は彼と50年間も不倫していたせいで
今も独身だし子供もいない。
朝鮮戦争が勃発した25の時、彼の子を中絶している。
あの時代は今みたいに
シングルマザーなんていなかったし
働きながら子供を育てる環境なんてなかった。
今あの子供がいれば48才だったのねって悦子さんは今でも悔やんでる。
貯金をおろして一人ぼっちで手術をうけた傷はまだ癒えていない。

実は50年間も悦子さんが不倫できたのは
彼女が天涯孤独の身の上だからだ。
親がいれば、兄弟がいれば、子供がいれば
彼女を50年間も妻子ある男に縛り付けておきはしなかっただろう。
不倫のおわりは、周りの介入?現実の生活にせまられるから。でしょう?

男の人はよく言うじゃない。
「愛人が女房のように振舞い始めると冷める」
結局悦子さんは女房のようにはなれなかったからこそ
長続きしちゃったのね。
彼を愛しすぎて、家に帰る旦那の車にしがみついたり
道路に寝転がって「行かないでと」毎回泣き崩れたっていうんだから。

悦子さんの心が落ち着いたのは犬を飼ってから。
独身女性が犬を飼うと婚期が遅れるというけれど
えつこさんはその犬の、寿命による死まで見取っちゃった。

世紀をまたいだ不倫関係に終止符がうたれたのは2年前。
いつものように電話でケンカして
ガチャンと切ってそれっきりだという。
70歳の女と80歳の男の
いつもの痴話げんか。
でも悦子さんの中ではまだ終わってない。
妻子持ちどころか、孫もひ孫もいるかもしれない彼を、まだ思っている。
死んじゃったかもわからないわ、なんて言って。


今私が付き合っている
いつまでたっても煮え切らない彼。
友達からは早く別れたほうがいいって言われてる。
彼が、もしも妻子がある身だったとしたら?
すっぱり別れるかしら。
それとも彼を今よりも深く愛し続けるかしら。
答えは後者のような気がしてくるの。
73才の悦子さんも28才の私も同じ悩みで酒を飲むの。
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by oshimatsubaki | 2004-06-28 15:50
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